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環境問題と向き合う物流
──EV導入で物流の未来を変える

環境負荷低減のため、EV 導入や中古トラックの EV 改造を推進。実証実験や改良を重ね、今後は保有台数拡大や水素自動車導入も視野に、持続可能な物流の実現へ挑戦を続けています。

メンバー

N.Yさん

物流品質管理部
部長

T.Iさん

物流品質管理部
安全管理課長

T.Mさん

総務部
シニアプロフェッショナル

SBSグループが、EV(電気自動車)の導入を進めているのはなぜですか。

物流業という業態自体が、とても環境負荷の大きいものだからです。国土交通省の発表では、日本の2023年度のCO2の総排出量は9億8900万トン、その19.2%の約1億9014万トンが運輸部門の排出量です。貨物自動車からの排出は、運輸部門の38.3%にものぼります。貨物自動車による輸送が事業の主体であるSBSグループにとって、CO2排出量や排気ガス特有のNOx、PMの削減など、環境負荷低減への取り組みはまさに喫緊の課題です。
SBSグループは「物流業として、社会に大きく貢献している」と胸を張ることのできる企業でありたいと、従業員の誰もが思っています。そのためには、仕事に丁寧に取り組むのはもちろんですが、地球や社会に対する責任を全うすることも、とても重要です。そこでSBSグループではサステナビリティ推進部を設置し、グループ各社と連携しながら、さまざまな取り組みを進めてきました。
具体的には、ドライバーに省燃費のための運転テクニックを指導する「エコドライブ研修」の実施や、新たな環境規制に対応した車両の導入、モーダルシフト※1の推進などがあります。EVの導入は急に始まった取り組みではなく、あくまで今までの環境負荷低減のための施策の延長線上にあるものです。

※1:トラックなどの自動車輸送を、鉄道や船舶による輸送に転換することで、環境負荷の低減につなげる取り組み。

EVの導入を決定した経緯について、教えてください。

2021年の春、SBSグループの代表である鎌田が、フォロフライ株式会社の小間裕康社長と出会ったことが最初のきっかけです。フォロフライ社は京都大学発のスタートアップ企業で、EVの開発・販売を行っています。フォロフライ社の取り組みを聞き、鎌田は「ぜひSBSにも導入したい」と考えて、物流品質管理部の部長を当時勤めていた私のもとへ、すぐに相談に来ました。詳しく話を伺ううちに「ラストワンマイル※2であれば活用できるのでは」と、私も徐々に乗り気になっていきました。
EVはバッテリーに充電した電気をモーターで駆動力に変換してタイヤを動かします。しかしバッテリーは体積が大きく、貨物を積載するスペースが侵食されるうえ、大型化すればするほどバッテリーの重量が増加します。そのため、貨物輸送への導入があまり進んでいないのが実状です。しかし、フォロフライのEV「F1バン」は1tサイズの小型バンであるため、バッテリーも小さく、1回あたりの充電で約300kmの走行が可能と、航続距離は比較的長いです。さらに中国の企業に製造を委託しているため車両価格も安価で、小口輸送に導入する余地は十分にあると考えました。
グループ内で意見はすぐにまとまり、その年の夏にフォロフライ社と資本提携を締結しました。10月には「F1バン」が、企業間の小口輸送を行うSBS即配サポートに納入され、本格導入に向けた実証実験を開始しました。

※2:商品が物流センターや倉庫を経由し最終的に消費者の手元に届くまでの最後のひと区間のこと

EV「F1バン」の実証実験について、教えてください。

貨物を積載した状態で、1日あたり約70回の停車・発進を繰り返しながら、市街地を運行しました。カタログ上の航続距離は1回の充電で300kmとされていましたが、実験での平均は200~210km程度でした。ガソリン車やディーゼル車でも、カタログ上の燃費と実燃費には2~3割の差が生じ、それと同程度の水準でしたので、「バッテリーとモーターの性能面では実用上の問題はない」と判断できました。
一方で、改良を要する課題も次々に見つかりました。まず、シフトレバーにP(パーキング)のレンジがありませんでした。駐車の際にはシフトレバーをPにして、サイドブレーキと併用するのが一般的です。サイドブレーキだけでも駐車は可能ですが、急に車両が動き出す危険性もあり、駐車時の安全確保に懸念が残りました。また、暖房装備も当初は不十分でした。そこで、電気の使用を最小限に抑えつつ、日本の冬の寒さに耐えうる温かさを確保しようと、フロントガラスに電熱線を細かく入れるなど、さまざまな改修を重ねました。ドライバーが安全に運転でき、かつ快適に過ごせる車両に仕上げることが、もっとも重要だと考えています。
実験を通じて示された課題を洗い出し、それをどう改修・改良するかについて、フォロフライ社と毎週のように会議を行いました。誰もが満足できる高品質の「F1バン」が完成し、グループでの正式導入が開始されたのは、2023年の秋からです。実証実験のスタートから2年以上を要しましたが、必要な時間であったと思っています。2025年7月現在、「F1バン」はグループ内で20台以上が導入されており、加えてフォロフライ社の軽自動車サイズのバン「FKV」も10台をSBS即配サポートにて使用しています。

中古トラックをEVに改造する取り組みも進めていると聞きました。これについて、詳しく教えてください。

SBSグループでは毎年、耐用年数を過ぎた大量の車両が廃車となっています。「長期間使用し、古くなった車両を何らかの形で有効活用できないだろうか」という発想から、中古トラックをEV車に改造するアイデアが生まれ、すぐに実行することになりました。EVの開発支援を行う株式会社IATとその関連会社であるヤマト・インダストリー株式会社※3との共同プロジェクトとして、2023年11月からトラックの改良に着手しました。
「F1バン」と同様、ラストワンマイルで活用するのがもっとも効果的と考えました。グループ会社であるSBSゼンツウの生協の配達で長期間使用された1.5tトラックをベースに、ディーゼルエンジン部分をバッテリー2台とモーターに換装する改造を行いました。改造にかかる費用は、新車のEVトラックを購入する場合の約3分の1と非常に安価でありながら、1回の充電で走行できる距離は新車と同程度を維持しています。実証実験の結果、走行性能や安定性も上々でした。
SBSグループでは1台のみの改造にとどまらず、当初から量産を念頭に計画を進めてきました。改造に使用した「三菱ふそうキャンター1.5t」は、グループ内で多く保有している車種であり、同じ車種の改造であれば、同じレイアウトで、かつ同じモーターとバッテリーを使用できるため、改造費のさらなる引き下げが可能です。2025年4月には国土交通省から改造認可申請が認可され、車両ナンバーを取得しました。量産を前提とした小型ディーゼルトラックのEV改造は、日本初の許可事例となります。

※3:現・ヤマトモビリティ& Mfg.株式会社

EVの導入における、今後の展望を教えてください。

SBSグループ全体では、2025年7月時点で約100台のEVを運用しています。今後はフォロフライ社の車両導入や中古トラックのEV化も含め、保有台数のさらなる拡大を目指しています。同時に、水素自動車の導入についても検討を始めています。先に述べた通り、EVはバッテリーが重く、かつ容積も大きいため、現時点での中型・大型のトラックへの導入は困難です。中型・大型トラックで大幅なCO2削減に取り組む場合、水素自動車の導入は必要不可欠だと考えています。今は水素自体が燃料としてあまりに高価なので、すぐに実用化するのは難しいのが実情ですが、将来見据えた準備は進めています。
EVの導入と並行して進める必要があるのが、充電インフラの整備です。SBSの事業所や倉庫のすべてが自社物件というわけではなく、賃貸物件も多数あります。その場合、敷地内に充電設備を設置するには地権者の許諾が必要となります。現在は、設置の必要性を丁寧に訴えながら、整備を順次進めている最中です。
また、チタン酸リチウム電池を用いたバッテリーの使用の検討にも着手しています。EVで広く利用されているリチウムイオン電池と比べて、充電時間がはるかに短く、長寿命なことが特長です。高価なうえにかなりの重量となるため、中型トラック以上での使用には向かないものの、ラストワンマイルで用いる車両には適合するはずです。

EVの導入について、「SBSだからこそできた」と感じる点はありますか?

代表の鎌田がフォロフライ社の小間社長と会ってからわずか4年で、100台規模での導入に加え、中古トラックの改造体制を整備するところまで進展させることができました。この圧倒的なスピード感は、SBSならではだと思います。
即断即決・即実行で、構想から実行までの期間がとても短いのがSBSの良いところです。「新しいことは取りあえずやってみよう。失敗したら次に活かせばよい」というフットワークの軽さが、発揮されたと感じています。創業して40年近くが経ち、会社は大きくなったものの、SBSの根っこは今でもベンチャー企業だと、今回の取り組みを通じて強く実感しました。リスクを恐れず、挑戦を尊ぶベンチャースピリットあってこそのSBSですし、その精神をもって今後もEVの導入を推進し、企業としての社会的責任を果たしていきたいです。

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